その後、数少ないプロデューサー陣に加わった。これは日本のスタジオでは稀な出来事だ
1UP:あなたは、"メタルギアサーガ"プロジェクトにクレジットされています。あなたがそれを考えたのですか?
RP:僕はアメリカでの『MGS3:Subsistence』の売上げを伸ばしたかった。そしてその一つの方法が予約数を増やすことだった。僕らは『MGS4』の準備段階で、以前よりも深く入り組んだストーリーになるだろうと思っていた。もしそれらのストーリーを『MGS4』で解き明かすつもりであるならば、できるだけ多くの人々をそれまでに捉えておかなければならなかったんだ。
そこで僕は"メタルギアサーガ"と呼ばれるアイデアをコジマに提案したんだ。そして『MGS3』から『MGS4』までの間にプレーヤーを失わないように、ヒストリーチャンネルっぽいドキュメンタリーで『メタルギア』の歴史を振り返ることにした。そしてそれを予約特典としてつけることにしたんだ。
コジマはそのアイデアを気に入って、僕に予算と2週間の期間を与えてくれた。僕は企画を立て、いろいろな人に助けを借りた。ビデオ編集をしてくれた人は二日もオフィスに泊まり込みで手伝ってくれたよ。予算が下りると製造コストを出して、脚本を書いて、ナレーションをつけて、どの部分を残すかカットするか編集して・・それを全部二週間でやったんだ。
そういうのは得意分野だったからね。そこでの仕事が、僕がこの先もこのスタジオに居たいと思う土台になったと感じるよ。僕はそのためにも、この二週間を犠牲にする必要があったんだ。
1UP:ライアン・ペイトンの典型的な一日とは?2~3ヶ月前の修羅場は覚えてる?
RP:あぁ・・何かモヤが架かってる感じかな。僕は本当に疲れていて、3月のナス合宿(メディア向け体験会)に来た人に何を言ったかマジで覚えていないんだ。発売までに僕が見なきゃいけない膨大なアイテムのリストがあったからね。それらをチェックして修正して・・なんか本当に霞がかってる。
普段の日か・・日本にいるときはできるだけ寝てるかな。僕はスタジオの近くに住んで、2~3時間寝て、シャワーを浴びて戻れば充電されたと感じられるのでラッキーだよ。でも多くの人はそんな贅沢は味わえないからね。ホント、ゲーム開発に集約されてるようなもんだよ。
一つの伝統しては皆が皆、昼飯を買いにコンビニに駆け寄るってことかな。一時間もかけずにね。下にあるセブンイレブンに行けばコジマプロダクションの全員が同じことをしてるのがわかる。オギリかサンドイッチを買って上に戻る。それが夕食にも。仕事中はそんな感じだよ。ゲーム開発がすべてさ。
1UP:そこから、どのようにしてアシスタントプロデューサーの地位に?
RP:そうだな。それは一夜にして起こったことじゃないんだけど、僕らが『MGS4』を作るにあたってしたことは、まずほんの少しだけ体制を立て直すことだった。そこから忙しくなり始めたね。そしてサイトーとアヤコ・タテヤマが僕の仕事を引き継いでくれたので開発側に移ることができだんた。
それにこれはケン・イマイズミさんのおかげでもある。2008年に発売される競争相手に負けないよ うに、僕を最終的に開発側に回させたんだよ。僕らは2007年の発売を目指していた。基本的にその辺の仕事は全て僕任せだったんだけど、それから僕のポジションについていろいろ検討された後、数少ないプロデューサー陣に加わったんだ。これは日本のスタジオでは稀な出来事だろうね。
開発チームにコントローラーを渡して『Gears of War』や『Halo3』をやらせた
1UP:『MGS4』は・・・特にその操作性やフィーリングにおいて、まるで欧米のゲームのように感じられます。これはあなたの役割が関係している?
RP:そうだね。僕の役目はこのゲームのフィーリングを良くすること、そして操作性を欧米のゲームのレベルに持ってくることだった。しかし僕はこのゲームの操作が欧米式になったとは言わない。改良され進化しただけだと思うんだ。まさに大作ゲームにふさわしいようにね。
例えば『ニンジャガイデン2』もそうだけど、カメラワークに問題のあるような日本製の3Dゲームは、フル3Dのゲームにも関わらずソリッドなコントロールが要求されるんだ。『MGS4』には素晴らしい操作性がある。そして欧米の大部分のゲームにもそれがある。ところが日本製の3Dゲームはほとんどの場合、酷い操作性になってしまっている。
他の日本のメーカーも、もし自分達のゲームの操作性を改善したいと思うなら、欧米のアイデアを取り入れろとは言わないまでも、彼らの考えを改める必要はあるだろうね。それは文化的なものから来るわけじゃなくて、むしろもっと技術的な問題だね。
1UP:ではどうやってあなたは開発チームの考えを改めることができたのですか?
RP:僕がいつもやるのは彼らにコントローラーを渡して『Gears of War』や『Halo3』、『Mass Effect』でも何でも欧米の大作ゲームをやってみろって言うんだよ。それによってプロジェクトの開始時点で、最終的にはどんな操作性になっていないといけないか理解することが出来たと思うよ。TGS2007は大きなマイルストーンになった。操作性に関してはそこでだいぶ固まったからね。
日本はどんな情報も漏れないように非常に厳格だからね
1UP:コジマプロダクションによるヒデオブログでは、ファンに最新の情報が報告されています。これはあなたのアイデアですか?
RP:ヒデオブログはコジマのアイデアだよ。彼は毎日ブログに良いエクササイズになると思ったんだ。彼がブログを始めた頃、毎日の生活を細かく記したとても長いエントリが掲載されていた。しかし『MGS4』の制作が佳境に入ると書くよりも、喋ったものを誰かに編集させた方が楽だと気づいた。それがヒデオブログからヒデチャンラジオに変わったんだね。
彼はその後、英語版を望んだ。小さなプロジェクトとしてね。基本的に日本版を英語版に直したやつだね。それはすぐに週刊になったんだけど、日本語から英語に直すだけじゃなくて、もっと『MGS』のストーリーについての議論を刺激するようなものにしようと努力したよ。
それはコジマと僕との競争になったね。多くの人を惹き付けるための。英語圏のファンに対して突然、世界でも流れるようになったんだからね。不公平だけど僕には利点があった。ポッドキャストを毎週流すのは辛かったけど一生懸命やったよ。それはだいたい二ヶ月前の第86回になるまで続いたんだ。
1UP:日本のメーカーは固く口を閉ざす傾向にありますが、あなたはどのくらい制約を与えられましたか?
RP:そうだな。それはかなり早い段階で問題になった。僕は情報が漏れないように、かなり注意を払ったよ。キミが言ったように日本はどんな情報も漏れないように非常に厳格だから。
多くの人にとってはどうでも良くても、ハードコアなゲーマーにとっては重要なものを明らかにしようと試みたよ。特にその操作方法については重大事項だ。これまでの『メタルギア』をどう考えているのか、毎週のように議論を重ねて、特に何も新しい情報を発表することがなくても、その議論を後押しするように興味をキープさせておくのも、一つの方法だったね。
僕はとても慎重にならなければいけなかった。何か言うとファミツウからインターネットに漏れてくることを知っているからね。毎週木曜のラジオはスキャンを見れなかった人でいっぱいになるだろうしね。だからインターネットでは何も見ない、話さないを貫いたんだ。
1UP:これまでトラブルは起きなかった?
RP:誤訳が日本の掲示板に書かれたこともあった。みんなショウを聞いてこう書いたんだ。「ライアンが三つの新プロジェクトを発表!」って。実際は3つのプロジェクトが動いているが、すぐに出るものではないし、大きなゲームでもないからそんなに興奮しないようにと言った。結局それらの製品は『メタルギア』の小説、携帯ゲーム、『Acid』のヨーロッパ向け携帯版だったんだけどね。僕の言う"発表"はコナミのトップには良かったかもしれないけど、時々そういったトラブルが起こる。大体は問題なしに終わるんだけどね。
1UP:あなたは『メタルギア』コミュニティをどのように表現しますか?
RP:そうだな。僕は自分自身をコミュニティの管理者として見たことはなかった。そしてそうなりたくもなかった。でも僕『メタルギア』ファンに感謝しているよ。かつて自分がそうだったように、大きなパズルを皆で解くのが好きな人たち。全てはゲームだ。マジで『メタルギア』はただのゲームなのに、プロデューサーやライターを含め、そういった人たちとの議論することは本当に楽しかったよ。しかしこのコミュニティはまさに情熱の塊さ。そして僕は、彼らの多くを怒らせはしなかったと思う。
最初の頃、アメリカ風に作られることに危機感をもった人もいたと思う。僕が『MGS4』を『Gears of War』みたいなゲームに変えてしまうんじゃないかって。そこにはストーリーに関する関心はなかったようだった。でも今ではレビューを読んだ多くの人々が、このゲームには十分なストーリー性があるということを知っていると思う。僕らはゲームを進化させ、よりプレイヤブルにアクセシブルにする一方で、ストーリーに手を抜くことはしなかったんだ。
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