by Sam Kennedy, 01.24.2007 1up.com (かなり意訳、端折りあります)
いまやアウトソーシングは様々な産業で一般的です。こう言うと解りやすいでしょうか。:社外の協力を得ることでより多くを達成することができるとすれば?特にそれが低コストで利用できるなら それを使わない理由がありますか?しかし面白いところは、アウトソーシングがあまり公には認められていないということ。言い換えれば、それは「秘密」なのです。
僕らはみんなスクウェア・エニックスが『ファイナルファンタジー』を作ったということを知っています。あるいは、カプコンが『バイオハザード』を作ったことも。あっていますか?ええと、それは正しくありません。あるゲーム開発会社の仕事です。それは世界でも最も大きく、あなたがプレイした沢山のゲームの裏方として存在しました。そしておそらくあなたはこれまでその会社の名前さえ聞いたこともないでしょう。
僕がその会社、「トーセ」に興味を惹かれたのは1999年のトーキョーゲームショウからです。僕は友人とカプコンのブースをうろつき、日本のゲーム業界に深く魅了されました。そして僕らは『バイオ』の外伝として、ガンコンを使うプレイステーションの『バイオハザード:ガンサバイバー』をチェックしていました。
そのとき友人が僕に振り返ってこうささやきます。「おい知ってるか?このゲーム、実はカプコン製じゃないんだぜ。これは"トーセ"っていう会社がやったんだ。知らなかっただろ?」
それは確かにもっともらしいようでした。『ガンサバイバー』をプレイしたことのある人なら誰でもご存知のとおり、それは『バイオ』シリーズのスタンダードからは外れたゲームだったからです。しかしその開発会社は何故自社のゲームとして発売せずにカプコンのものとして発売したのでしょうか?そしてこのゲームだけなく他にも同じようなものがあったのでしょうか?それ以来、僕はトーセについて奇妙な好奇心を抱くようになり、長年にわたってその秘密主義の会社について知ろうとしました。それはまさに魅惑的な会社であったのです。
京都に拠点を置くトーセは、東京と上海のスタジオも合わせ、およそ1000人の従業員を抱え、自社出版をしないゲーム会社としては最大です。そしてほとんど全てのゲームソフトメーカーは、ゲームの一部分、あるいは全てをこの会社に任せたことがあります。にも関わらず、同社は極少数のタイトルでしかその協力を公にしていません。
しかしトーセの顧客リストを見てみればゲーム界の大御所と言える会社の名前がズラリと名を連ねます。ニンテンドー、カプコン、ナムコ、ソニー、スクウェア・エニックス、そしてEAやTHQ等のアメリカの大手メーカーの名も。同社はこれらのメーカーと25年以上にもわたり、1000本以上のゲームを秘密に作り続けてきたのです。
トーセは主に、あるゲーム機から他のゲーム機への移植作業を請け負っています。その仕事ぶりは多くのソフトメーカーにとって外部委託とは思えないほど満足のいく仕事です。スクウェア・エニックスの例では、PS1とGBAの『ファイナルファンタジー』の移植をトーセに任せています。(最近の『FF4』や『FF7』を含みます)さらにPSPの『ヴァルキリー・プロファイル』もトーセです。セガは『フェラーリF355』、『The King of Route 66』、『SegaGT』等、アーケードタイトルからの移植をトーセに任せてました。ニンテンドーはGB版『パルテナの鏡』をはじめ、携帯ゲームを中心にトーセを使っています。
また大部分のメーカーはいくつかの人気シリーズ作品でもトーセに仕事を任せています。ニンテンドーは、『スーパープリンセスピーチ』を、スク・エニは『ドラゴンクエストモンスターズ』や『スライムもりもりドラゴンクエスト』を開発させており、セガは『バーチャファイターサイバージェネレーション』を作らせています。カプコンはGC版『バイオハザード』の大部分をトーセに任せており、『ガンサバイバー』や『バイオハザード0』もトーセの協力です。コナミは『メタルギアソリッド・ゴーストバベル』でトーセを使い、バンダイの『ドラゴンボールZ』関係のゲームのほとんどがトーセ製です。
これだけトーセが関わっているにも関わらず、そのゲームのパッケージやエンディングクレジットなどでトーセの名前が出ているものは極わずかしかありません。もしゲームのクレジット部分でトーセの名前を見つけられたとしても、それは「スペシャルサンクス」の部分にあります。そしてそこにトーセのスタッフの名前がクレジットされていたとしても、その名前は大抵が偽名です。トーセはウェブサイトにおいて取引先メーカーの名前を誇らしげに掲載していますが、彼らが取り組んだ1000以上のタイトルは明らかにしようとしないのです。
何故彼らは秘密にするのでしょう?数年前、僕は幸運にもトーセのスタッフに、彼らの会社の実態について尋ねる機会に恵まれました。僕の質問は、即座に満面の笑みを浮かべさせることになりました。この知られざる秘密は、彼らの成り立ちから基づいたものだったのです。彼らは会社を創めた当初から、自社出版を行わず、裏方として働くことを決めていたのです。それは他の開発会社にも影響を与えています。
「私たちは多くの他の会社とは違ったビジョンを持っています。」トーセのダイスケ・サトーが1UPに答えてくれました。「私たちは他のメーカーが良いゲームを作れるようにサポートし、利益を上げられるよう助けたいと思っています。私たちは彼らにとって目標を達成するための心強い裏方でありたいのです。」そしてトーセはどんな役割でもベストな仕事をしようとします。「私たちは、他のメーカーのためにゲーム作りのアシストから全てまで様々な仕事を請け負います。時にはメーカーさんから企画とライセンスだけを頂いて、設計部分から全てをお任せ頂くこともあります。」
面白いのは、トーセは自分たち作ったものが、販売元のメーカーの名前で売り出されても全く気にしないところです。実際、トーセはそれ以外の方法をとることはありません。世間に名を売るという願望が全く無いのです。「おそらくチームで働いている個人個人の中には、もしかするとそういった願望のある人がいるかもしれません。しかし会社としては全くそういうことを気にしていないのです。」サトーはこう語ります。
関わったプロジェクトをトーセから探り出そうとしてもムダなあがきです。同社はほとんどのメーカーとの契約のうえで、関わったソフトの名前を明らかにしないという契約を結んでいるからです。そのような背景があるにも関わらず、僕はトーセが関わったソフトの名前を調べていきました。そして本稿のさわりで触れたタイトルを含め、多くのタイトルがトーセ製であることを突き止めました。しかし残念なことに、実際にトーセが関わったさらに何百本ものソフトがまだ知られずにいます。それらは決して今後も明かされることはないでしょう。ファミコン、スーファミ、メガドラ、サターン、ドリキャスやPS1で遊んだゲームでトーセが密かに作ったものは一体どれくらいあるというのでしょうか。そして僕らが現在遊んでいるタイトルが、一体どれくらい彼らの手によるものなのかは・・考えないでおきましょう。
「リリースしたいソフトはあっても開発するだけのリソースを持っていないそれらのメーカーさんは、あまりそのような印象を世間に与えたくないようです。そこに我々が入り込む余地があります。」サトーはこう語ります。「それに一部のメーカーさんは、本当に長くお付き合いさせて頂いてもらってますので、その出来上がりも計算しやすいのだと思います。」
興味深い事に、近年、トーセは北米のメーカーとも多く関わり始めているようです。最近ではTDKが『シュレック』のゲームをトーセに開発させましたし、THQは『Avatar: The Last Airbender』を、そしてブエナビスタは『ナイトメアビフォアクリスマス』を任せました。
これらの3社はトーセの開発を表面的に明かすことについて何の懸念も無い様に見えましたが、(どの会社もトーセを秘密裏に使ってきた日本の伝統を理解していなかったのです)北米のメーカーとより関わることで、僕らのプレイするタイトルにトーセがもっと関わることを望んでいます。それは簡単なことではありません。「日本と北米のメーカーの大きな違いは、時差とそのやり方です。」サトーは言います。「日本では通常受け入れられる内容が、アメリカでは予期しない反応が返ってくることがあります。」
もちろんトーセのように秘密裏に開発を請け負う会社は一つではありません。カプコンは、サターン版『バイオ』の移植で評価の高い開発会社であるネクステックと『バイオ:コードベロニカ』の開発契約を結びました。しかしそれでもトーセは秘密裏に開発を行う会社としては最大の会社です。
最後に、トーセが各メーカーに代わって名前を表に出す出さないは重要なことでしょうか。結果的にそれが良いゲームであれば、それはあまり重要でないでしょう。(いくつかのトーセ製ゲームがずさんな出来だったことは指摘しなければなりませんが・・)しかし同社が今の姿勢を続ける限り、もっと多くのゲームが、知られざるこの開発会社から出てくることになるでしょう。
そして、あなたが次に何かのゲームを起動させたとき、そのゲームは実際は誰が作ったものなのか、確信がもてなくなることでしょう。
大きな例外:『伝説のスタフィー』
パッケージ上にトーセの名前を見つけることの出来る唯一のゲームがこの『伝説のスタフィー』*です。面白いことに、トーセは『スタフィー』に関してだけは、ニンテンドーと共同でゲームやキャラクターの権利を有していることを明らかにしています。「北米で発売されるかどうかはニンテンドーさん次第ですね。」その『スタフィー』がアメリカで発売される可能性についてサトーはこう話します。「もしニンテンドーさんがアメリカに持っていきたいと思えば、我々は喜んで力を貸すでしょう。」
* 日本でのみ発売されている『カービィ』風のゲーム。
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