Entertainment Weeklyに、任天堂の宮本茂氏のインタビュー記事が掲載されています。記事では「『Halo』なら僕でも作ることは出来た」「『トワプリ』の売上げには失望した」など率直な発言も飛び出すインタビューとなっており興味深い内容です。さらに現実の社会問題をゲームで取り上げる可能性や、宮本氏の息子さんのゲーム業界入りについても言及しています。
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■:”マリオ”をスーパーにした男
ゲームデザイナー、シゲル・ミヤモト。我々にマリオやドンキーコングやゼルダの伝説を与えてくれた愛想のよいビジョナリー。ゲーム界のスピルバーグと呼ばれることもある。(スピルバーグのことを「映画界のミヤモト」と呼ぶ人もいる)
彼が手がけたWiiの『スーパーペーパーマリオ』は好評価ともに最近発売された。またWii用のゲームとしては、ファンを見苦しいほどに興奮させ、発売が待たれている『スーパーマリオギャラクシー』が控えている。
我々は最近Time誌の「影響力のある100人」にも選ばれた54歳のミヤモトを捉えた。そして彼がいつかは社会問題をテレビゲームで扱うかもしれないこと、また『トワイライトプリンセス』の売上げに対する失望など、率直なインタビューをしました。さらに彼の息子が父親の足跡を歩むのかどうかについても明らかにされます。
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Entertainment Weekly(以下EW):あなたがテレビゲームについて知り尽くしているのは明らかですが、その他のエンターテイメントについてはどうですか?たとえば映画はどうですか?
シゲル・ミヤモト:僕はちょうど『硫黄島からの手紙』と『父親たちの星条旗』を観たところですよ。非常によく出来ているし考えさせられる映画でした。でも画面の隅に小さい枠を出して同時に2本を見れたら何が起こってるのかよくわかったかもね(笑)
EW:その両作品はいくらかシリアスなテーマを含んでいます。戦争、犠牲、そしてヒロイズムの概念。あなたのゲームの大部分は軽快で明るいものです。あなたはゲームデザインに現実世界の問題を扱ったり、より深い社会的なメッセージを込めたりすることはないのですか?
シゲル・ミヤモト:たぶん、私の人生に重大な影響をもたらすような問題に直面すれば、それも考えるでしょう。そのようなゲームを作るのはきっと面白いはずです。最近開かれたGDCのインディペンディエント・ゲームフェスで見たゲームに核戦争を扱ったものがありました。全世界が破滅するというものです。そのゲームには非常に強力なメッセージが込められていました。
EW:現実世界の問題をゲームにするとすれば、どんな問題に取り組みますか?
シゲル・ミヤモト:いくつかアイデアはあります。ひとつは日本でのコトです。日本の電車の中にはたくさんのお年寄りや妊婦向けの優先席があるのですが、日本の若者はそこに座って人が来ても席を譲らないことが多いんですよ!それを見ると僕は本当にがっかりします。そこでどうにか若者達が目上の人を尊敬することができるようなゲームを作れないものかと・・・
そして、もう一つは本当にワナワナ来るような問題なんですが、日本にはフリーランスでこっそり働いて税金を全く払わない人がいます。僕は人々が税金を政府に納めることで社会が助けあうことが出来ると思っているんですが、日本ではあまり理解されていません。だから社会的な問題をゲームに盛り込むとすればそんなものになります。まぁ僕がこんなことを言ってると年寄りの小言みたいに聞こえるかもしれませんが。
EW:年寄りになったと感じる?
シゲル・ミヤモト:そうですねぇ。僕は年を取ったし、もっと体重に気を使わないといけない。(そう言いながらお腹をさする)趣味の範囲ですが、少なくとも週に2回は水泳に行こうとしています。みんなからはWiiでワークアウトしなきゃって言われます。でも仕事してるみたいな気分になっちゃうんだよね!
EW:あなたは日本の社会問題に言及しました。しかしゲームはグローバルなビジネスです。そしてアメリカの若者にもアメリカならではの多数の問題が存在します。私が何故こんなことを言うのかというと、任天堂製ゲームへの批判の一つに、あまりにも日本人を中心に考えて作られたものが多すぎるのでは、という批判があるからです。例えば、アメリカのゲーマーには『メトロイド』よりも『Halo』が売れました。あなたは若いアメリカ人のゲーマーとの接点が無くなっているかもしれないことを心配しますか?
シゲル・ミヤモト:まぁ僕でも『Halo』を作ることはできましたよ。でもそれは、僕がそういったゲームを作ることが出来なかったわけじゃなくて、単にそういったゲームを選ばなかったという事。ゲームをデザインするうえで第一にしていることは、人々の望んでいるものに迎合してゲームをつくらないということですから。僕はいつでもゲームを遊ぶうえで新しい体験ができるようにしている。
EW:一部のアメリカのゲーム会社はそのようには考えていないようです。彼らは新しいアイデアを模索するよりは、リスクを計算して続編ものばかり作っているようです。市場調査やターゲッティングが支配しています。それはゲームビジネスをダメにするものでしょうか?
シゲル・ミヤモト:大きなお金がかかると、なかなかそんな風にはゲーム開発はできないってのは理解できるよ。でもキミらゲームデザイナー達は、自分自身で欲しいと思えるものを創る必要があるんだよ!僕がやってるようなノリで、他の彼らにも開発をしてほしいと思ってる。僕は誰かにゲームを見せても意見は尋ねたり調査をしたりしないんだ。ただ彼らが遊んでいる時の目や表情を見てるだけで。笑ってるかな?イラついてるかな?って。おそらく僕は、自分で自分のゲームをテストをしてるんだろう。ちょっとそれは科学的ではないけれど
EW:あなたはプレーヤーにとって何が楽しいと思えるのかを見つける能力で大きな成功を手に入れました。あなた自身は楽しいと思っても実際にはそう思うようにいかなかったゲームはありましたか?
シゲル・ミヤモト:はい。それは確実にありますねぇ。かつて『F-Zero』や『スターフォックス』のようなタイトルで外部の開発会社と一緒に働いたことがありましたが、結果的にはがっかりしたと言うしかありませんでした。消費者はそれらのゲームのアイデアに興奮してもらえたと思いますが、十分に売れたとは言えませんでした。さらに正直に言うと、『トワイライトプリンセス』は日本ではほとんど売れてない。物凄く期待外れだった。ここアメリカではOKでしたが。
EW:何故、日本では『トワプリ』は上手くいかなかったのでしょう?
シゲル・ミヤモト:そうですねぇ・・思うに、Wiiを買った人の多くは、必ずしもそういったゲームに興味があるわけではないってことなんでしょう。それにゼルダをプレイしたくても慢性的な品不足のせいでWiiを見つけることができない人も沢山います!!しかしまぁゼルダのようなロールプレイングゲーム(広義の)に興味がある人は少なくなってるんでしょうね。
EW:お子さんはこの夏に大学を卒業するそうですが、あなたの足跡にならってゲーム製作に関心を示したりしていませんか?
シゲル・ミヤモト:彼はイベント企画業に入りたいようです。チームのメンバーと意見を出し合って何かのビジョンを作ったり、僕の仕事といくらか似ているところもあるので、ちょっと嬉しい感じもあります。いやでも答えとしてはそうだな・・彼はテレビゲームについてはまったく関心は示しませんでしたね。までも彼はクリエイティブですよ。例えば先日、彼は大学のスキーサークルのためにプロモーションビデオをまとめなければいけなかったんですが、週末に僕らは街中を車で回って、ビデオの素材をかき集めては、家で編集したりして、彼とクリエイティブな作業に取り組んだのは楽しかったですよ。
http://www.ew.com/ew/article/0,,20037961,00.html?cid=recirc-peopleRecirc